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松たか子主演の映画「告白」は、登場人物全員が不幸になる私刑の物語。

松たか子主演の映画「告白」は、登場人物全員が不幸になる私刑の物語。映画

どうも、シマウタオウタオです。

今回のメンタルヘルス映画は、教え子に愛娘を殺された中学教師の復讐劇を描いた「告白」です。

本屋大賞に輝いた湊かなえのベストセラー小説を、独創的な映像感覚と確かな演出力を持つ中島哲也監督(「嫌われ松子の一生」「パコと魔法の絵本」)が映画化し、2010年大ヒットしました。

いじめ、毒親、中学生の狂気、少年法をテーマにした映画なので、今回選んでみました。

本作は、R15+(15歳未満は観覧禁止)です。特に同世代が登場する中学生にはショッキングな内容です。15歳未満の方、苦手な方の視聴はご遠慮ください。

今回も月額400円のAmazonプライム・ビデオで視聴しました。

あらすじ

監督
中島哲也
製作
島谷能成
百武弘二
吉田眞市
鈴木ゆたか
キャスト
松たか子
木村佳乃
岡田将生
西井幸人
藤原薫

2009年本屋大賞を受賞した湊かなえのミステリー小説を、「下妻物語」「嫌われ松子の一生」の中島哲也監督が、松たか子主演で映画化したサスペンスドラマ。そのショッキングすぎる内容から賛否両論、話題騒然となった衝撃作。

とある中学校の1年B組、終業式後の雑然としたホームルームで、教壇に立つ担任の森口悠子(松たか子)が静かに語り出す。「わたしの娘が死にました。警察は事故死と判断しましたが、娘は事故で死んだのではなくこのクラスの生徒に殺されたのです」

教室内は一瞬にして静まりかえり、この衝撃的な告白から物語は始まっていく…。

感想

これは観る人によって評価が二分すると思います。日本アカデミー賞で4冠を達成し、興行的にも大成功、各レビューサイトでも高評価のため、多くの人に支持を得ている作品ですが、私はダメでした。

告白

© 映画「告白」フィルムパートナーズ

映像は美しく、一人ひとりの独白によるストーリー展開は斬新で面白いです。主演の松たか子さんを筆頭に役者陣の演技も素晴らしかったです。「下妻物語」「嫌われ松子の一生」も大好きなので、中島哲也監督の世界観は私好みだと思います。

しかし、この映画は合わなかったです。

他の方のレビューを見ると、「見事な復讐劇」だと爽快感を感じる方が多いですが、そんなにスッキリする映画でしょうか?

私が視聴したAmazonプライムビデオで、一番評価を集めているトップレビューにはこうあります。

深いレビューを書いてる方も多いですが、シンプルに生意気な少年を懲らしめていく様がスカッとしました。子供相手とはいえ容赦ない復讐。良い作品です。

44人がこのレビューに「役に立った」を押しています。多くの人がこの映画を見て、爽快感を感じたみたいです。

告白

© 映画「告白」フィルムパートナーズ

私の感想は真逆です。まったくスカッとしません。復讐劇としての爽快感が皆無で、後味の悪さだけが残りました。

なんで、みんなこの映画を見てスカっとするんですか?

愛娘を殺されたとはいえ、中学教師が教え子に淡々と復讐をする、しかも復讐方法が陰惨で卑劣です。牛乳にHIV患者の血液を混ぜる、クラス内でいじめられるように仕向ける、不登校になった生徒を追い詰める、家族にまで危害を加える…。

大人が、13歳の少年に行う復讐方法でしょうか?

「命の重さを教えるために、命を踏みにじる」 この逆説的テーマがこの映画の主題だと思いますが、これを大人が子供に対して行っては後味の悪さしかありません。

私が復讐劇で爽快感を感じるには、弱者が強者に立ち向かう、被害者が絶対悪に立ち向かうといった分かりやすい構図が必要です。

しかし、この映画にはそれがありません。娘を殺されたシングルマザーの中学教師と、複雑な家庭環境で育ち殺人を犯した13歳の少年。弱者と強者の線引きがあいまいです。むしろ両者とも弱者に見えます。

しかし、それが原作者・湊かなえの狙いであろうと思います。この物語は復讐劇ではなく、被害家族による私刑(法によらず、私人が勝手に加える制裁。リンチ)をリアルに描いただけです。

復讐と私刑。似ているようで違います。手段を選ばず敵を討つ復讐と、手段を選び罰を与える私刑。松たか子が演じた女性教師・森口悠子は、明らかに娘の敵を打つ目的ではなく、殺人者を罰する視点で描かれています。

そして私刑とは、被害者・加害者・周囲の人間・社会、誰にとっても不幸な結末しかもたらさない最悪の愚行です。

だからこそ、人間は古来より法を作り、法に委ね、精神的安寧を手に入れたのです。私刑が誰にとっても、不幸な結末しかもたらさないと知っているから…。

告白

© 映画「告白」フィルムパートナーズ

見る人によって評価が分かれると思いますが、衝撃的な作品なのは間違いありません。ご興味のある方はぜひご覧ください。

「どうやったら、人は命の重さを理解できるのか」「どうやったら、人の命を奪った人間はその罪を償えるのか」

この映画はあえて法に依らず、私刑を選択することにより、登場人物全員が不幸になる最悪の結末を見せてくれます。最後まで生き残った少年Aも、復讐を果たした女性教師も、その後決して幸せになることなどないと私は思います。

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